画像検査についてお話します
整形外科では、四肢の触診や跛行(はこう)診断と呼ばれる歩様観察などの「整形外科学的検査」と、脊髄反射などを調べる「神経学的検査」を経て、骨や関節などを評価するための「画像検査」を行います。
画像検査ではレントゲン検査を基本に、必要に応じてCT検査や関節鏡検査も行います。
CT検査画像はデジタルデータを統合して3D画像(立体的な画像)にすることができます。
レントゲン検査
骨や関節および周囲軟部組織の構造を評価する単純X線検査です。
レントゲン検査は従来のフィルム方式から媒体プレートをスキャンしてデジタル画像データに処理する形(CR)へと変化してきましたが、昨今は透過したX線を画像認識素子検出器を用いて瞬時にデジタル画像にするデジタルX線検査(DR)が主流になりつつあり、ふなばし動物医療センター かつまペットクリニックもDRを採用しています。
デジタルX線検査は「高速」「高解像度」「高安全性(低放射線量)」の特色を持ち、撮影された画像の保存や運用がネットワーク上でできるので、よりスピーディーで精度の高い診療が可能です。
レントゲン検査はどうぶつをスタッフが保定した状態で撮影できるので通常は無麻酔で行うことができ、体への負担が少なくて済む(低侵襲)という利点もあります。しかし、一方向からの照射であるため、骨や軟骨組織が複雑に重なりあっている箇所など、より微細な描出が必要な場面では全方位照射ができるCT検査を併用したり、関節の内部まで描出したい場合は内視鏡による関節鏡検査を併用することになります。
Penn HIP ペンヒップ検査
米国ペンシルバニア大学のゲイル・スミス博士によって開発された〝股関節の緩み〟を評価する特殊なレントゲン検査です。犬によく見られる遺伝性の整形外科疾患(
股関節形成不全)を発症するリスクについて科学的に診断することで予防・早期発見・軽症化が可能になります。ペンヒップ検査は圧迫・伸延ストレスをかける専用器具を用い、認定獣医師が撮影します。
Cアームレントゲン
整形外科では装着インプラントの確認など、手術中もレントゲン撮影が必要です。どうぶつを手術台に載せたまま角度を変えてのピンポイントな撮影になるため、Cアームと呼ばれる可動式回転型のレントゲン装置も併用します。Cアームは透視機能を備えているので、撮った画像をリアルタイムでTVに写し出して確認することができます。
[SHIMADZU]OPESCOPE ACTENO 外科用X線テレビシステム
CT検査
CT検査とは、X線を360度方向から照射して身体を輪切り(断層)にした画像を得る検査です。撮影は、鼻腔から頭部、胸部、腹部、脊椎、骨盤などほぼ全身が可能で、単純X線検査や超音波検査ではわからなかった多くの病気を診断することができます。全身麻酔をかけ、人工呼吸下でおこないます。
CT検査では、撮影画像データをもとに任意の角度の断面像や立体的な3D画像を作成することもできるため、どこの部位にどのような変化が生じているのかを視覚的に明瞭化することができます。
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関節鏡検査
専用の内視鏡を用いて関節や関節構造内の変性(損傷状態など)を詳細に観察する検査です。
関節鏡検査は数ミリの皮膚切開を数カ所に施して筒状の器具を挿入すれば関節の状態をモニター画面の拡大映像で見ることができるので、整形外科の診断や手術には今や欠かせない検査と言えます。一方でその操作には高度な技術習熟度が求められることから導入している動物病院はまだまだ少ないのが現状です。
関節鏡は、患部組織の一部を採取して調べる生検等にも用いられるほか、関節内の遊離骨片の除去から前十字靱帯断裂、股関節形成不全等の手術まで幅広く用いられます。メス切開での手術とは比較にならないほど低侵襲で術後の回復も早いことから、関節疾患の治療において非常に大きなメリットが得られる検査・手術方法であると言えます。
肘 鉤状突起分離症(FCP)
十字靭帯