肺の内部に水腫(むくみ)が生じ、肺の中に液体(水)が出てきて機能不全を起こしてしまう病気です。肺水腫になってしまうと、多くの場合は治療することが難しく、亡くなってしまう可能性が高いです。最も多いのは心不全によるもの(心原性)ですが、腫瘍、感電や外傷によるものなど(非心原性)もあります。
- 主な症状
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- 主な原因
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心臓の働きが悪くなることで血流が滞り、肺の血液量が増加して肺静脈の圧も上昇、血液中の水分が肺の中ににじみ出すことで発症します。
心不全から肺水腫に至る流れ
- 心不全や僧房弁閉鎖不全症など心臓の異常
- ❶ 左心室から左心房に血液が逆流、心臓肥大
- ❷ 左心房からつながる肺静脈が拡張
- ❸ 肺胞内の毛細血管の内圧が上昇して水分が押し出され、肺水腫に
正常
肺水腫
診断
症状や身体検査などからこの病気の可能性を疑います。そして呼吸の状態に注意しながらレントゲン検査や超音波検査や血液検査を行うことでこの病気の診断を行います。ただし、肺水腫になっている動物は呼吸が苦しくなっていることがほとんどであり、状態が不安定であることも多いので、診断に先立って治療をすることや酸素濃度の高い空気を吸わせることで状態の安定化を優先することもあります。
治療
まずは、呼吸の苦しさを軽減することが大切です。そのために酸素濃度の高い空気を吸わせ、酸素濃度を高くしたお部屋(ICU)に入ってもらいます。そして原因となる病気があれば、その治療を積極的に行います。
また、肺にでてきている水を少しでも少なくするために利尿剤や血管拡張剤を用います。肺の中に出てきている水は注射器などで抜くことはできませんので、それ以上肺に水が出てこないようにする治療と、お薬でお水を抜いていく治療になります。
気をつける事・お家でのケア
肺水腫はほとんどの場合、急に起こることが多い緊急性の高い病気です。
早期の治療が大切です。肺水腫になったことがある場合や肺水腫の原因になりうる持病をもっている場合には呼吸の様子(安静にしている時の呼吸数が1分で40回を超えるようなら要注意)をよく観察し、異常がある場合にはなるべく早く受診しましょう。激しい運動は避けて、塩分の多い食餌、特にヒトの食べ物やおやつは絶対に避けましょう。暑さや寒さにも注意です。肺水腫の原因が心臓にある場合には心臓のお薬の飲み忘れにも注意が必要です。
実際の症例紹介も併せてご覧ください
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