甲状腺機能亢進症は主に中~高齢のネコで起こる、
甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。
原因は良性または悪性の甲状腺腫瘍や過形成(組織の肥大)が原因とされています。甲状腺ホルモンは新陳代謝を促進するホルモンで、これが過剰に分泌されることで身体の代謝機能が増え、エネルギー消費量が増えます。そのため「よく食べるが痩せている」、よく鳴く、気性が荒くなる・興奮する、元気や食欲の低下、嘔吐、下痢などの症状が表れます。また、心臓にも影響するため、心拍数の上昇、呼吸が荒いなど、様々な症状が表れます。
甲状腺ホルモンとは
喉の気管の両脇、喉仏(甲状軟骨)の下に蝶が張りついたような形で存在する一対の器官~甲状腺~から分泌されるホルモンです。血流に乗って全身の細胞に働きかけ、新陳代謝をサポートし、消化管内での栄養吸収を助けたり、心臓の働きや血流を促す働きをします。
甲状腺ホルモンは、甲状腺の濾胞(ろほう)細胞と呼ばれる場所でヨウ素を原料につくられるホルモンで、3つのヨウ素を持つトリヨードチロニン(T3)と、4つのヨウ素を持つサイロキシン(T4)の2種類があります。脳の下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)と互いに調整し合う形で合成と分泌を行なっています。甲状腺機能亢進症は、サイロキシン(T4)が過剰に分泌される病気であり、高齢の猫に多く見られます。一方、サイロキシンの分泌が低下する病気が甲状腺機能低下症であり、犬に多く見られます。
- 主な症状
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- よく食べるが痩せている、筋肉の減少
- よく水を飲む
- よく鳴く、落ち着きがなくなる
- 活発になる、気性が荒くなる、興奮しやすくなる
- 元気がなくなる、無気力になる
- 食欲不振
- 嘔吐、下痢
- 頻脈、心拍数の上昇、呼吸が荒い
- 原因
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良性または悪性の甲状腺腫瘍や過形成(組織の肥大)
診断
まずは全身の身体検査を行い、触診で甲状腺の腫大の有無を確認します。そして他の病気と区別するために、血液検査で全身の状態をチェックし、ホルモンの値を調べます。血中甲状腺ホルモンの値が高値であれば本疾患の可能性が非常に高いです。軽度もしくは早期の甲状腺機能亢進症の場合には、後日に甲状腺ホルモンの再測定が必要となる場合があります。
また、超音波検査により腫大した甲状腺を確認することが可能です。
当院では院内で血液中の甲状腺ホルモン濃度の数値測定(血中ホルモン測定)が可能です。
くわしくは
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免疫反応測定装置
治療
【食事療法】
甲状腺ホルモンの元となる「ヨウ素」が制限された食事を与える事が勧められます。
【内科療法】
内服薬により、甲状腺ホルモンの過剰分泌を抑えます。
【外科療法】
甲状腺が腫瘍化している場合、内科治療で効果が得られない場合等には甲状腺を切除する場合があります。甲状腺の切除により、それ以後の投薬や食事療法が不要となる場合があります。
合併症がある場合にはその病気に対しての治療も必要になります。
予後
内科治療や食事療法において甲状腺機能亢進症は完治することはありません。上記の治療法により、生涯うまく付き合っていく必要があります。多くの場合はお薬により、コントロールする事ができます。
気をつける事・お家でのケア
お薬により病気をコントロールしていく場合は、飲んでいるお薬がちゃんと効果を出しているか調べるために定期的な来院、血液検査が必要になります。
また、高齢のネコちゃんの多くが腎臓病を患っています。
甲状腺機能亢進症の治療をすると、たくさん供給されていた血液量が低下するため、腎臓病が表に出てくる(または悪化する)場合があり、同時に腎臓病の治療が必要になることがあります。
甲状腺の治療を始めたら、腎臓病のチェックも欠かさずに行いましょう。