かつまペットクリニック

KATSUMA PET CLINIC

白内障の手術についてお話します

白内障はステージ3・4(成熟期・過熟期)まで進行すると、手術以外に治療法はありません。手術は、眼球の白く濁った水晶体のタンパク質部分を細かく砕いて吸引し、人工レンズを挿入する、というもので人間の白内障手術と同じです。白内障の手術には、高度な専門技術・専門医療機器が必要となります。
かつまペットクリニックは十数年前から積極的に眼科に取り組んでおり、これまでに白内障手術だけで300症例以上を手がけています。他院の先生からのご依頼にも対応しており、眼科で受診される患者さんの5~10%、白内障手術を受けられる患者さんの約10%が、ご紹介の患者さんです。

はじめに

白内障手術は、他の眼科疾患を併発しているなどのほか、ご家庭での術後管理が困難と判断される場合もお受けいただくことができません。
下記いずれかに該当される場合は手術不可となります。
  • 進行性網膜萎縮
  • 網膜剥離
  • 重度の緑内障
  • 全身の健康状態が悪い
  • 老齢等による体力低下
  • エリザベスカラーを装着できない
  • 目薬の点眼ができない
また、手術に臨み、全身麻酔下でおこなう下記検査において網膜に異常が認められた場合も手術は不可となりますのであらかじめご了承ください。
網膜電位図測定検査(ERG)
網膜に強い光を当ててその反応(電位変化)を記録し、網膜の働きが正常かどうかを調べる検査です。網膜は眼をカメラに例えるとフィルムに相当する部位です。網膜の働きが正常でなければ、白内障手術をしても視力の回復は難しくなります。

白内障手術

進行した白内障において唯一の治療法です
白内障のステージ3・4は、水晶体内のタンパク質がほぼ完全に変性して白濁し、光を通せないため視力が失われている状態です。水晶体は一度白濁してしまうと内科治療で回復することは100%ありませんので、外科治療(手術)が唯一の治療法となります。
白内障手術とはこんな手術です
白内障手術は非常に精緻な手技を要する手術です。水晶体は眼球の中で嚢(のう)と呼ばれる透明な薄い膜でできた袋に包まれていますが、その袋の表面に直径約5ミリの小さな穴を開け、超音波チップと呼ばれる細い管状の器具を挿入し、中身の白濁部分を超音波で砕いて乳化させてから吸引します。嚢は非常にデリケートな組織で、粉砕吸引する際、器具の先端が少しでも接触してしまうと壊れてしまうため、微かな手の震えも許されないほど修練された専門技術が必要になります。人工レンズを挿入する際も、5ミリの穴から慎重に挿入し、中でレンズを広げて安定させるという微細な手技を要します。
白内障手術は顕微鏡下でおこないます
白内障手術は手術用の双眼顕微鏡を用いて行われます。かつまペットクリニックでは、人間の白内障手術で用いられるのと同じ最新・最高スペックの眼科手術用顕微鏡システム(Leica M844 F40)を採用しており、細部まで鮮明に写し出された拡大画像を見ながらマイクロサージェリーと呼ばれる専用の眼科手術器具を用いて安全性も精度も最高水準の白内障手術をおこなっています。
眼への負担が少ない最新テクノロジーによる手術です
白濁した水晶体の吸引には超音波発振テクノロジーを搭載した最新の専用乳化吸引装置(AMO ホワイトスターシグネチャー)が用いられます。乳化吸引とは、白濁した水晶体を超音波の振動で破砕しながら水流を利用して水晶体のかけらを吸引していく方法です。従来の超音波発振システムでは超音波による熱の発生が細胞組織に一定の負担をかけていましたが、最新テクノロジー搭載のこの装置では超音波の発振・停止を細かく制御することで熱の発生を大幅に抑え、負担を大きく軽減することが可能になりました。

手術の流れ

手術当日の朝お預かりし、手術直前まで散瞳剤の点眼を30分おきにおこないます。
全身麻酔後、ERG検査で網膜に異常がないことを確認した後、手術開始となります。
  • 1角膜切開
    角膜に3~4ミリの切り込みを入れます。
  • 2嚢切開
    切開創から器具を差し込み、水晶体を包む嚢の表面(前嚢)に直径5ミリ程のまるい穴が開くよう切り取ります。(水晶体が亜脱臼してグラグラしている場合にはテンションリングを挿入して安定化させます。)

  • 3乳化吸引
    ②で開けた小さい穴から超音波チップを差し込み、白濁した水晶体を細かく砕きながら吸引していきます。(嚢には触れないよう細心の注意を払います)
  • 4レンズ挿入
    吸引後、人工レンズを挿入します。レンズが広がり、安定したのを確認した後、前眼房内をよく洗浄します。
  • 5角膜縫合
    切開した角膜を縫合して手術は終了となります。 縫合は体内吸収糸でおこないますので抜糸の必要はありません。

レンズについて

レンズは現在2種類あり、当院では主に水晶体のサイズによって使い分けています。レンズは、光学部と呼ばれる本体部分と支持部と呼ばれる支えの部分から成っており、光学部はいずれもアクリル系の柔らかい素材でできています。レンズはコンパクトに折り畳まれた状態で挿入し、中で展開して保定される仕組みです。
Aタイプ
水晶体のサイズが小さい場合(直径12~13ミリ以下)、当院では光学部がよりきれいなこちらのレンズを使用します。
Bタイプ
水晶体のサイズが大きい場合はこちらを使用しています。
硝子体の圧が高い場合や術中合併症で後嚢破損が生じた際にもこちらのレンズを使用します。
手術前
手術後 ※Bタイプ使用

手術後の合併症について

前編でお話させていただきましたが、犬の白内障手術では10件に1件の割合で合併症が発生します。白内障はステージ3まで進行すると、手術をしてもしなくても合併症のリスクは高くなります。(合併症について詳しくはこちら
手術をご希望の場合は以上をご理解ご了承いただけますようお願いいたします。
当院では合併症リスクを考え、片目ずつ手術することをご提案しています。
片目を手術して2~3カ月様子を見て、合併症の心配がないようであればもう片方を手術する、というのが一番ご安心かと思います。
なお、網膜剥離を発症した場合には、眼科専門病院(東京1病院、横浜1病院)をご紹介しております。網膜剥離の発症予防として当院で術直後にレーザー網膜凝固処置をおこなうことは可能です。

術後管理について

入院と通院
手術後は4~5日入院していただくことになります(4~5日連日通院可能な場合は手術翌日に退院していただいても構いません)。その後の一カ月間は週に1度のペースで通院をお願いしています。
家庭でのケアと注意点
  • 術後約30日間はエリザベスカラーを24時間装着していただきます。
  • 抗生物質、胃薬およびステロイド剤の内服および抗生物質・ステロイド点眼を毎日おこなっていただきます。
  • 術後2週間は極力お散歩は控えてください。その後、お散歩は可能ですが、術後30日間は激しい運動は控えてください。

DATA

当院の術後1年間の予後データです。
■ N=サンプル数 ※一部重複あり
年齢別
犬種別
糖尿病患者
白内障手術で再び目が見えるようになると、動物は自然に元気を取り戻します。
何より飼い主様ご家族とアイコンタクトができることは、動物、特に犬にとって、
この上ない喜びではないでしょうか。
白内障手術をお考えの方は、できるだけ早い時期に一度受診され、ご相談ください。 院長