船橋市 動物病院 | かつまペットクリニック | 整形外科 犬の白内障

ふなばし動物医療センター かつまペットクリニック

血液検査でわかること
血液は、全身の健康と生命維持に欠かせない役割を果たしている重要な〝臓器〟です。
外見は液体(流体)ですが細胞性成分を含んでおり、骨髄やリンパ節と共に造血器という臓器に分類されます。
血液は、血管を流れて体内を循環することで全身の細胞に酸素、栄養、熱エネルギーを運び、
細胞で不要になった二酸化炭素を肺へ、代謝された老廃物を肝臓や腎臓へ、回収して送る働きをしています。
血液には体内の今を知るための様々な情報が詰まっており、
細胞の成分や数値・形態を調べることで全身の健康状態をチェックすることができます。
基礎知識
血液は、有形の 血球 成分と液体の 血漿(けっしょう)成分で構成されており、
血漿の中に血球が浮かんだ状態で血管内を循環しています。
血球とは?
赤血球、白血球、血小板などの細胞性成分
赤血球 : 真ん中が凹んだ円盤のような形をしており、酸素分子と結びつくヘモグロビンという成分を多く含んでいます。組織や細胞に酸素や栄養を運び、二酸化炭素を回収します。
白血球 : 細菌などの外敵から身を守る防御や免疫の働きをします。白血球は殺菌作用を持つ顆粒白血球(好中球・好酸球・好塩基球)と無顆粒白血球(単球 ※マクロファージまたは樹状細胞に変化)、リンパ球の5つに分類されます。
血小板 : 傷ついた血管からの出血を止める血液凝固の役割を担っています。
血漿とは?
タンパク質や無機塩類、炭水化物、脂質、ホルモンなど細胞に必要な成分を含む淡い黄色の液性成分
血漿は血液に抗凝固剤を入れて遠心分離機にかけることで取り出すことができます。水分以外に、タンパク質、脂質、血糖、無機塩類などを含んでいます。血漿は毛細血管の壁から外にしみ出し、酸素や栄養の受け渡しと老廃物の回収をして再び毛細血管へと戻ります。血漿の中には血液凝固因子と呼ばれるタンパク質があり、血小板と共に働いて止血反応を起こし(血液のゲル化)、失血を食い止めます。
構成
組成
血液検査 〜2つの検査でふるいにかけます〜
健診やドックでおこなう血液検査は、体のどこかに異常がないか、ふるいにかけて調べるスクリーニング検査になります。血球検査と生化学検査という2つのスクリーニング検査によって血液の成分を調べ、数値によって異常の有無をチェックします。
血球検査(CBC)体全体の状態を調べます!
血球の大きさや数を調べます(血球計算)。炎症や貧血はないか、骨髄の造血能力はどうかなど、体の中で今どのようなことが起きているのかを把握するために欠かせない重要な判断材料になります。
世界標準の検査項目で調べる血液検査を完全血球検査(Complete Blood Count)と言います。 血球検査
数値の見方
数値の見方
生化学検査(Chem)臓器・器官の状態を調べます!
試薬を用いて血液に化学反応を起こさせ、血液中のホルモンや酵素の量を測定することで肝臓や腎臓、脾臓の働きを調べます(Blood Chemistry)。体のどの部分に異常が生じているか、ある程度まで特定することができます。検査項目は臓器毎に異なり、複数の要素を組み合わせて診断します。 生化学検査
電解質
生化学検査 電解質
血液検査の流れ
  • 採血
    動物にできるだけストレスをかけず短時間で済ませてあげられるよう、保定に配慮して迅速に行います。
  • 遠心分離
    採血後の血液は、血液が固まってしまわないよう抗凝固剤が内側に塗られた専用チューブに入れ、よく混ざるよう何度も静かに上下させます(転倒混和)。専用チューブを小型遠心分離機にかけ、血球と血漿に分離させます。
    専用チューブ
    小型遠心分離機
    遠心分離機
    ヘマトクリット検査(PCV)
    血液に占める赤血球の容積を測る検査では、ヘマトクリット管と呼ばれるガラス製の細い管を使用します。毛細管現象を利用して血液を満たし、遠心分離機にセットして12,000回転/分で5分間回転させます。
  • 血球計算
    全自動血球計算器に検体をセットして、測定を開始します。当院では最新の機器を導入しており、19項目の検査がわずか2分で完了します。検査データは院内システムでカルテに統合され、過去のデータと比較することもできます。
    全自動血球計算器
    院内管理システム
  • 生化学検査
    特定の化学反応を起こす試薬を組み込んだスライドが乾燥状態でセットされていて、そこに検体(血液)を投入することで水分を溶媒とした化学反応が起こる検査システム(ドライケミストリー)です。セットしてスタートボタンを押すだけで、肝臓や腎臓など内臓系の数値が得られます。
    血液生化学自動分析装置
  • 血液塗抹検査
    血液を薄く延ばした血液塗抹標本を作製し、3つの試薬で染色して顕微鏡で観察します。赤血球、血小板、白血球の形や種類、数などを詳細にチェックします。感染症はないか、貧血の原因は何か、腫瘍細胞はないか、骨髄に異常はないか、など観察から様々な事が推測できます。
    デジタル顕微鏡
  • [オプション検査]血中ホルモン測定
    免疫反応の仕組みを利用して、甲状腺ホルモン(T4)や甲状腺ホルモン刺激ホルモン(TSH)、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)などの血中ホルモンを測定します。クッシング症候群や甲状腺機能亢進症などの疾患の診断に多く用いられます。
    ※ホルモン測定は外部の検査センターに委託されることも多い専門的な検査になりますが、当院では早い段階から専用検査機器を導入し、院内で検査を完結することで結果がわかるまでの不安な時間やストレスを軽減できるよう配慮しています。
    免疫反応測定装置
血液検査Q&A
Q若くて健康であっても血液検査(健診)は年に1回必要ですか?
当院を含め動物病院では一般的に成犬成猫が年1回、7〜8才以上は年2回の血液検査(健診)を推奨しています。
血液検査の結果は、その子の今の健康状態を知るためだけでなく、定期的にデータを蓄積していくことでその子の体調の傾向を把握できるので、病気の予兆にいち早く気づけたり、健康寿命を延ばしたりすることが可能になります。血液検査のデータをファイルしておくと、転居や転院でかかりつけ病院が変わった際も安心です。
Q春のフィラリア検査の時、一緒に血液検査(健診)をすすめられるのはなぜですか?
フィラリア検査とは血液中にフィラリアの幼虫がいないことを調べる検査です。いないことを確認して初めて予防薬を投与することができます。フィラリア検査では採血のため注射をしますが、痛い思いをして採血をするのであれば、ほんの少しだけ多く採り、その血液で全身の健康チェックができれば予防と健診を一度にしていただけることになるのでおすすめしています。
Q「参考基準値」の見方は、範囲内なら〝正常=安心〟で、範囲外なら〝異常=病気のサイン〟ですか?
参考基準値とは、健康な動物の95%が含まれる下限値と上限値の範囲となっており、あくまでも参考にしていただくための基準値です。上記以外の5%の子は基準値から外れて高い数値が出たり、低い数値が出たりするということでもありますので、基準値外であってもただちに異常というわけではありません。私たち人間がそうであるように、犬や猫も個体差や体質があります。犬種や猫種、年齢、体重等によっても変わってきます。あくまでも統計的な目安として参考にしながら、問診や身体検査、症状などと照らし合わせて獣医師が総合的に評価・判断をしていきます。
Q既に病気が見つかり治療中であったり、持病と長くつきあっているような状態でも、
血液検査でわざわざ健康チェックをする必要はあるのでしょうか?
血液検査には、全身をふるいにかけて健康状態を調べたり病気の診断に役立てたりする以外に、「治療効果を判定する」という目的もあります。投与している薬の効果がきちんと出ているかどうか、慢性疾患の症状をコントロールできているかどうか等を数値から読み取り、別の薬や治療法の検討を含め、より良い健康管理支援ができるよう役立てます。